というわけで、金曜に行われたDiGRAJAPANの公開講座、「同人ゲームの潮流2〜「ひぐらし/うみねこのなく頃に」に見るコンテンツとコミュニティ〜」のメモです。ざっくりととった講演記録なので細部の言い回しが違うのはご容赦。あと、読みやすくするためにしゃべりと順番を若干入れ替えてる箇所もあります。
竜騎士07さん:07th Expansion
BTさん:07th Expansion
高橋直樹さん:Nscripter開発者
三宅陽一郎さん:DiGRAJ研究委員・ゲーム開発者
有馬啓太郎さん:漫画家
井上明人さん:GLOCOM・ゲーム研究者
七邊信重さん:東京大学・ゲーム研究者
(以下、敬称略)
七邊:スタッフの役割分担は?
竜騎士07:わたし竜騎士07がシナリオとグラフィック。BTがホームページ管理、ゲームスクリプト、いろいろ資料づくり、立ち絵の表示差分づくりとか。八咫桜がメインスクリプト、daiが音楽。でも表向き。忙しいと何でもやる。
七邊:同人とは何か。同人と商業の定義は?
竜騎士07:結果としての作品では見分けられないが、作る過程が違う。商業では、売れるものを作らないといけないので、売れるものを、という企画になる。同人は、おもしろくて作る、好きだから作る。
七邊:作品だけにとどまらない?サークル活動もおもしろさ優先?
竜騎士07:同人活動はおもしろさが第一義。ホームページや掲示板も。楽しくなければ同人たりえない。当人が楽しくなくなったら止まってしまう。
七邊:同人ソフトを手に入れるには?
竜騎士07:同人ソフトはイベントか同人ショップでの頒布になる。
三宅:宣伝、流通は同人では重視されない?
竜騎士07:同人と商業の違いだと思う。同人は好きだから作る、商業は売るために作る。同人は作るところまでしか考えてないことが多い。宣伝は失念してるといえる。
三宅:流通とか宣伝をしなくていいのはコミックマーケットという場があるから?そこに人が来るという前提があるから?
竜騎士07:同人ソフトについていえば、ショップやコミケでより多くの人に頒布できるようになった。内輪で作ったおもしろいものを全国に届ける機会がふえたと思う。投稿プログラムが雑誌に載っていたような時期は、友人たちの内側での消費でとどまっていただろう。
有馬:イベント会場で、本はその場で見られるけど、ソフトは中身がわからない。そこの部分で頒布していく上でどうやったのか?同人誌をやっている人間からするとそこが謎。
BT:同人誌即売会ではパッケージしかないからわからないが、ソフトはウェブ上で体験版が頒布できる。フリーソフト頒布サイトにアップして体験版等の形で触れてもらう形が可能になった。ネットが発達する前は体験版の頒布は難しかったが。
竜騎士07:体験版の頒布をやり始めたのは3本目が終わってから。体験版頒布までほとんど反響がなかった。BTが体験版を配布しようと言い出したのが、ひぐらしが広く知られるきっかけになった。
有馬:同人ゲームは口コミやファンの影響で広がっていく側面が大きいと思う。そういう面についてコメントを。
竜騎士07:インターネットの口コミは大きい。10年早くても10年遅くてもだめだっただろう。コミュニティでしかできないものが、インターネットのおかげで評価をいただけたのかなと。
有馬:商業作品と同人作品で口コミの力の差は感じるか?
竜騎士07:わかりかねるが、同人も商業も違いはたぶんないんじゃないか。
BT:同人はメディアで露出しないのでどうしても口コミがメインだが、商業でも口コミで売れたのはあると思う。
有馬:同人で作られたものは、作りたいという欲求・意志が最初にあるという前提。商業作品よりも応援したいという気持ちになりやすいのでは?
竜騎士07:応援してくれる方は好きだから応援してくれる。すでに大人気のソフトをわざわざ「これおもしろい」というのはないだろう。マイナーな方が口コミにしてて楽しいというのはあるだろう。
七邊:ひぐらし・東方以外のほかの同人ゲームはどう?
竜騎士07:ひぐらし、東方だけが知名度が高くて、ほかの作品はおもしろくないのでは、と思われているのが残念。たまたまネット上で特化して名前が出ているので、ほかにおもしろい作品がないようにおもわれているが、ネットで価値観が統一されすぎた悲劇ではないか。有名な作品だけ買えばいいわけじゃない。
七邊:同人に入ったきっかけ、経緯は?
竜騎士07:友人のお姉さんが同人作家さんで、なぜ漫画をインクで書かないのかといわれてそこから悪の道に(笑) 漫画が好き、ゲームが好きというのはクラスで少数派だったけど、初めて晴海にいったときに、晴海には「それ(漫画好き、ゲーム好き)しかいない」ということにショックを受けた。(公務員になって)仕事をしていても自己表現がしたかった。
同人サークルに所属するようになり、ゲームシナリオを1本書いたところでそのサークルがつぶれたので、2000年ぐらいに自分のサークル立ち上げた。07th Expansionの立ち上げの時はリーフファイトのオリジナルカードをやってた。10年ぐらい紆余曲折した。
七邊:BTさんはカードがきっかけで07th expansionに入られた。
BT:大学時代にはテーブルトークRPGのサークルに入っていて、活動が軌道に乗ってきたので小冊子を作って発表しようということになり、コミックマーケットに参加した。そうこうするうちにリーフファイトもやるようになり、07th Expansionを知った。
三宅:同人サークルってどういうふうに結成されるの?
BT:人それぞれかなぁ。つくりたいものに同調して入るとか、
竜騎士07:昔は近所に住むもの同士が集まって、というのが多かったけど、最近はこれつくるから手伝って、みたいな集め方もあるみたい。
七邊:NScripterについて。
竜騎士07:カードゲームをやっていたが、他のこともしたいなと。月姫が評価されてた頃に、八咫桜がサウンドノベルを作りたがった。それで、舞台劇用に書いた「雛見沢停留所」のシナリオ、投稿したけど宙に浮いてたので、それを加筆してシナリオにすればと考えた。
三宅:同人と商業を比べて、ユーザーにとっては購入の経路が違う。ユーザーとどういう感覚でつながって作っているか?
竜騎士07:ユーザーとのつながり、コミュニケーション、キャッチボールだと思ってる。ユーザーから感想がほしいなあと思って全部返事書いてた。最初の頃は6週間ほど感想に忙殺されてたり。そのへんが同人と商業の大きな違いじゃないかな。特定個人の顔が見えてる。そいつの気分でものができあがる。会社は組織でつくる。
うみねこでは、ユーザーの推理を次回の作品に描いて反論して、というような作り方をしている。そのへんで距離感の近さを感じてもらえたらうれしい
三宅:ひぐらしというゲームは如何に「遊び」なんだろうか。みんなでコミュニティで考えるという体験、BBSとディスクがいっしょになってゲームになるというゲームデザインだと思う。(スライドにはMMOQUIZの文字も) ひぐらしはARGという視点でゲームだと納得できた。竜騎士先生にとってゲームとは?
竜騎士07:ゲームの定義は、コミュニケーションツールであるべき。ゲーム性、選択し、隠し(要素)、得点などがなくても、コミュニケーションツールになっているならゲームだと考える。
ただ読んで終わるだけなら小説と何ら変わらない。でも、シャーロックホームズの冒険は、終わりに答えが提供されるが、ひぐらしは、前編では最後まで読んでも謎はほとんど投げっぱなし。話し合っていくことができる。
ゲーム性ということでは、たとえばアクションゲームで解法が一つしかなければコミュニケーションツールたりえない。RPGで、4〜5人パーティを個性的なジョブで組めたとしてもラスボスが特定の組み合わせでないと倒せないということでは議論の余地がない。議論の余地を残しているのがゲームだと思う。議論、自己主張の余地を残すことで、ユーザー同士が語らって、ああだこうだとやる。そこでゲームたりうる。ひぐらし(という)ソフト)自体にはゲーム性はないが、BBSも含めて語り合うことができる。
三宅:BBS含めてのゲームデザインというのはどこから着想した?
竜騎士07:インスパイアされた作品がいくつかある。
ひとつは八つ墓村。あと、ブレアウィッチプロジェクト、映画の外に出てる資料も含めて作品となっていて、資料全部よんでようやく議論ができる。それをみてこのシステムを思いついた。
三宅:BBSの運営について。巨大なコミュニティに育てていくためにはどんな工夫があった?
BT:工夫といわれると悩んでしまうが、ユーザーとのコミュニケーションを楽しみたいという気持ちが大きかった。BBS,ユーザー同士が楽しく議論できるようにというのを強く心がけた。そういう気持ちが伝わっていって、増えて大きくなっていったと思う。07thだけの力でなく、ユーザーが自ら盛り立ててくれた。
七邊:絵の掲示板と文字の掲示板があるが、これら掲示板間の交流はどうしている?あと掲示板上でのトラブルなどは?
BT::絵と文字での交流はこころがけており、ユーザーからも絵と文字のリンクの要望とかもあったので、システムの改良をしている。
トラブルに関しては、あれだけ大きい掲示板なので、細かいトラブルは多いが、作品が好きで集まってくれてるかた、みんなで楽しもうという気持ちがあり、多少トラブルがあっても、トラブルが大きくなることはあまりない。うれしい。
三宅:ひぐらしではゲームが終わってBBSに書き込み始めるのが本番という感じがある。
竜騎士07:読み終えたところでホームページへの誘導をするボタンやメッセージを置いている。ホームページまで含めてゲームだと思っている。
BT:人気投票とかそういうイベントを積極的に。ファンに楽しんで欲しいというのもあるが、自分たちもファンの方たちと混じって楽しんでいきたい
有馬:同人の流れの中で興味がありそうなところから質問を。最初に考えたときどこまで考えていた?
竜騎士07:ぼんやりと抽象的な世界観はあったけど、最初は全体で5話ぐらいかなという感じだった。全体がはっきり見えるようになってきたのは2話目が完成した頃。
有馬:ヒットしたという実感の分岐点、同人と商業ラインの分岐点は?
竜騎士07:ヒットしたな、という分岐点は、体験版を4話の直前、5月ぐらいに体験版を出して評価をもらうようになった。持ち込み数は1話が50,2話が100,3が200だった。コミックマーケット65では落としてしまい、3を500を再販した。4では1400。
有馬:商業で取り上げられるようになったのは?
竜騎士07:メディア展開ということでは最初はドラマCD。4話を出したときに会場でホビボックスのプロデューサーがきた。ネットでの反響を見てばっときた感じだった。ほかは2004年の冬から2005年の春先ぐらいにいろいろな話がきはじめた。
有馬:同様のムーブメントの再現は可能か?
竜騎士:クオリティだけでなく、タイミングなどもある。狙っていけるかと言われればNO。
有馬:サウンドノベルの同人はいろいろあるの?
竜騎士:いろいろある。クオリティの高い作品はまだまだ眠ってる。
七邊:ヒットがプレッシャーになった部分はある?
竜騎士:プレッシャーは少なからずあるが、反応してもらえるのが楽しいので、喜びの方が多い。めあかしへんのときに同人ショップから予約が入った。未完成なときに予約開始されたのはショックだった(笑)
有馬:作品を完成させる、よいものをあげるというところ。締め切りに責任がでてくるが。
竜騎士:2つ大事にしていること。1つはクオリティ。同じくらい大事にしてるのが納期。どうもよいものを作るなら時間をかけていいという感じがあるが、よいものを決められた間隔で出し続けることが重要と思っている。コミックマーケットのたびに必ず新作を出す、クオリティを出す。コンスタントに出し続けてくれることが望まれる。不定期感の作品では忘れられる。定期的に出れば安心感がある。うみねこに休みなく入れたのは誇らしい。
有馬:期限に押されてクオリティを犠牲にする、というのもあるかと思うが。
竜騎士07:納期を組み立てるには、先に作戦を立てておくことが大事。半年のあいだに作り込めることを目標にしてる。クオリティ+コンスタント。同人ソフトの世界では、完成するまで待って買うという人が多く、最初のうちは「いつ完成するの?完成したら買います」とか聞かれてた。連載ものというコンセプトを理解してもらうのに2年かかった。
あと、一定以上の部数にいくと、無責任ではいられなくなる。同人作品にも、ショップの予約などがあり、(ヒットの実感としては)数字と言うより、ショップの事前予約かな。
有馬:わかります(笑)
竜騎士07: 黄昏フロンティアさんとご一緒したことがあるが、彼らはよくできた管理体制で律してる。でもそのラインまで行かないと、作品を完成させることはできないのかも。
七邊:職業同人という言葉がありますが。
竜騎士:その言葉はいろいろに使われているが、わたしのなかでの職業同人という言葉について。好きなものを作るのが同人という話をしているが、コミケでも、部数狙いでつくるなら、それが職業同人ではないか。私の場合は好きなものを好きなように作っている限り、それは同人。売れなければならない、ということになれば、それは同人サークルではないんではないか。
高橋:税務署が来るぐらい売れたらもう商業だろう(笑) 実験性の高い作品が生まれる同人は第二の市場だと思っている。
竜騎士07:高橋さんが無料でツールを公開してくれたのは大きい。月姫でできた演出がNscripterでできるんだ、と思いながらひぐらしをつくった。ひぐらしをやったひとも、こんな演出ができるんだと思って作品をつくってくれるとうれしい。
高橋。ベーシックマガジンとは何だったのかということについて。初心者向けにはいい雑誌だった。対応機種の多さ、とっつきのよさ。あと、ベーマガは評論記事が充実していた。
竜騎士:わたしもベーシックマガジンではいった。実家はファミコンもゲーム&ウォッチもだめだったが、父のPC-8801があったので、なら作ればいいじゃないかと思った。ゲームは買うものではなく作るもので入った。光栄の最初の「信長の野望」を改造したりしながら、人のゲームを改造するのではなく、自分のをつくっていけたらなと思った。
高橋:ゲームエンジンの発展について。Flashに機能性が近づいてると思う。Flashとか「」にこにこ」とかRIAの方に将来性があるんじゃないかな。(スライドには、ネックは課金方法。ニコニコもフラッシュコンテンツも有料コンテンツ配信には使いにくい、とあり)
ゲームエンジンの今後の展望としては、ノベルゲームは文学や小説と比較するだけでなくセルアニメとの違いを意識したい。スクリプト演出も重要になるだろう。
竜騎士:漫画、映画、アニメ、小説の中間ぐらいにサウンドノベルがあるとおもっている。しかも、それらのいいとこどりなわりには一番作りやすい。
でもまだ着目されてない。ゲーム性のないゲーム、パソコンで読む小説ぐらいな見方しかされてない。今後定着していくと期待している。
七邊:Nscripterに求めることは?
BT:バグがあって終了するときに、エラーハンドリングできる機能があって、とにかく先に進めさせられるとうれしい。
七邊:日常生活での体験が影響したことはある?
竜騎士:たくさんある。大人キャラクタについては特に、インスパイアされてるケースが多い。同人界では10年出遅れてるので、社会経験を生かそうと。いろいろなものが、かなりさりげなく入ってます。
七邊:同人の場で学んだことは?
竜騎士:「愛のある2流は、愛のない1流にまさる」という持論。プロジェクトに愛のない方ではおもしろいものはつくれない。作品に込める思いで負けないこと。情熱しかない方もたまにいらっしゃるが。。。
有馬:でも「つくりたいけどどうやったらいいかわからない」というのは、そもそも情熱が足りないよね。調べてでもやるだろ(笑)
七邊:サークルに誰か人を増やすとして、その人に求める条件は?
竜騎士07:情熱と社会経験3年、どっちも譲れません。
七邊:ユーザーに要望は?
竜騎士07:ユーザーには、いろんな作品に積極的にふれてほしい。聞いたことがない作品にどん欲に。壁(サークル)だけじゃなく島中(サークル)も。ゲームで冒険するだけじゃなく自分で冒険する。無名な作品にも冒険して触れてほしい。
新:掲示板のユニークユーザー数は?規模が大きくなるとコミュニティの質が変わるとおもうのだが。
竜騎士07:どれくらいの人が来るのか、書くのか、リピートするのか、把握してない。リピーターは数パーセントだと思う。規模が大きくなるに従って変わったのは確かにある。
100部の頃は、ネットに慣れた人が主だったが、最近はネットデビューしたてのような人も書き込むようになった。
会場から:ラノベよりも物語の固まりとしては大きいと思うが、量的なフリーハンドをどう活かしている?
竜騎士07:大量のテキストは表現の幅を制限している。分量的には1本がラノベ3冊分といわれた。サウンドノベルはテキストが多いほどすばらしいという空気感がある。ボリュームそのものが作品クオリティと連結されている。それは危惧している。短編を出しづらい。
会場から:それはTYPE-MOONさんの影響?
竜騎士07:Key、Leafの頃からの流れだと思う。昔のアクションゲームのステージ数のように、ボリュームがクオリティとして扱われている。短編ももっとあっていいと思う。ただ、短編にいくらの値段を付ければいいか。模索中なんだろう。大作化が進みすぎるのはいいことではないと思う。プレイ時間30分ぐらいの作品がころころ発売されていいと思うのだが。
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