というわけで、尻Pの新刊、「南極点のピアピア動画」を読了。1本はミク表紙のSFマガジンで既読だったものの、連作というかシリーズでどんどん規模がでかくなっていくのが面白い。
で、作品としての「南極点の〜」はそれはそれで大変面白く読ませてもらったのですが、ちょうどアゴラでこちらの記事を読んだところだったので、ちょっと別のところに考えがいったのをメモ。
アップルの70万人雇用〜新卒6割就職と初任給1000万円の差の理由 (新 清士)
このコラムは、ざっくり「IT企業は上位エンジニア1000人ぐらいの雇用は生み出すけど、製造業のような数十万人クラスの雇用は生まないよね。どうしようね」という内容だと読みました。
ソフトウェア産業は限界費用が0に等しくなっていくと言われていて、ダウンロード配信がこれだけ普及してくると確かにその通りだと思うわけです。限界費用が0ということは、つまり、増産にヒトも資源もいらないということで、つまり雇用創出力はないわけです。ゲームだろうがOSだろうが、売れようが売れまいが「製造」コストはサーバに上げた時点で確定しているわけです。
そこに「南極点のピアピア動画」です。
ネタバレしたくないのでアレですが、本作の中でモノが増えるシーンがいくつかあるのですが、驚いたことにどれも工程に人間がほとんど絡んでない。デリバリーとかフィードはするけど、製造そのものに手は動かしてない。
野尻先生がどういった意図でそう描いたのかはわかりません。職人を使うと「夏のロケット」的な感じになるから避けたのか、あるいはボカロ的世界観にあわせたのか。あるいは、特に意図はないのかもしれません。
ただまあ、SFの中でも、宇宙時代も雇用は増えないんだなあ、とシミジミしてしまいました。